2018年11月14日

漢方薬の使い道はいろいろ

 当院の診療スタイルは西洋医学を基本にしています。処方する薬の大半は西洋薬です。しかし西洋薬では十分な効果を得られない、または西洋薬に治療法がない病態も小児疾患の中に少なからず存在します。そんな時こそ漢方薬の出番です。日々の診療において、西洋薬で対応しきれず漢方薬を使用する場面は多々あります。漢方薬を導入して数年になりますが、今や漢方薬という便利なツールなしに治療のニーズに応えることは難しいとさえ考えるようになりました。 

 小児科医院では、熱が出た、咳や鼻水が止まらない、お腹をこわした、などの主訴で来られる患者さんが多数を占めます。一部の重い病気を除外できれば、大部分はかぜと診断されます。かぜはウイルスが原因ですので、インフルエンザウイルスとヘルペスウイルスを除き、役に立つ西洋薬は少数にとどまります。抗菌薬は無効です。咳止めや鼻水止めは、生体の防御反応を邪魔して病状をかえって長引かせる懸念があります。解熱薬も同様です。では、漢方薬はどうでしょうか? 漢方薬は免疫反応を迅速に立ち上げたり過剰な炎症反応を鎮めたりする作用を持つため、ウイルス感染症に対する有用な対抗策になります。 

 発熱の急性期(上がり始め)には麻黄湯や葛根湯です。亜急性期(熱がダラダラ続く時)には柴胡桂枝湯です。個々のかぜ症状に対して、たとえば、サラサラの鼻水に小青竜湯、ドロドロの鼻水に葛根湯加川芎辛夷、喉の痛みに桔梗湯、乾いた咳や喉のイガイガに麦門冬湯、湿った咳に五虎湯、激しい下痢に桂枝人参湯、嘔吐に五苓散などなど、様々な漢方薬が使えます。西洋薬との併用も可能で、相補的に効果を高めることが期待できます。かぜが治った後もスッキリしない時は補中益気湯です。かぜを反復する子どもには、柴胡桂枝湯や小建中湯の長期投与です。回復を助けたり守備力を増したりする薬は西洋薬にはなく、漢方薬の独壇場といえます。 

 かぜだけでなく、その他の病気にも漢方薬は重宝します。おできに排膿散及湯、水いぼに薏苡仁、火傷に紫雲膏、赤ちゃんの鼻づまりに麻黄湯、乗物酔いに五苓散、胃もたれに六君子湯、便秘や腹痛に小建中湯、打撲に桂枝茯苓丸などなど、枚挙に暇がありません。夜泣きや夜驚症など西洋薬では太刀打ちできない病状にも漢方薬は有用です。不安、イライラ、過緊張、不眠など心の不調にも漢方薬は適しています(甘麦大棗湯、抑肝散、柴胡桂枝湯など)。「心身一如」の言葉があるように、漢方薬は身体を楽にすることで精神も元気にしてくれます。 

 漢方薬の使い道が幅広いことをご理解いただけましたでしょうか。当院は西洋医学を基本にしつつも漢方薬を積極的に取り入れて、子どもの病気や悩みを解消することに努めています。そもそも西洋薬と漢方薬を厳密に区別する必要はありません。それぞれのいいとこ取りをすればよいのです。先日聴講した「サイエンス漢方処方」の講演会は、「漢方の処方に陰陽論や五行説などの理屈は要らない。現代医学の手法で科学的根拠に基づいて処方すればよい」「西洋薬と漢方薬をうまく融合できれば、医者にも患者さんにも大きな福音になる。医者は病気と闘うための戦略が一気に増えるし、患者さんは病気から解放される道が拓ける」という論旨でした。我が意を得た思いがしました。

 漢方薬の最大の欠点は飲みにくさでしょう。味や臭いは子ども向けではありません。当院は子どもが飲みやすくなる工夫をいろいろ提案しています(院内でパンフレットを配布しています)。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。

0 件のコメント:

コメントを投稿