2018年1月24日

成長曲線を活用しよう 1

 母子健康手帳(母子手帳)は、育児を支えるための有用な手引書です。今回、母子手帳に掲載されている「成長曲線」について解説します。

 厚生労働省は、10年ごとに全国の乳幼児(0〜6歳)の身体計測値(身長、体重、頭囲)を集計し、成長曲線を作成しています。最新版の母子手帳に記載されている成長曲線は、平成22年のデータに基づくものです。乳幼児の成長曲線は、パーセンタイル(百分位数)という単位で表示されています。パーセンタイル値とは、全体を100として小さい順に並べたときに何番目に位置するかを表した数値です。曲線の上端は97パーセンタイル、つまり100人中で小さい方から97番目です。下端は3パーセンタイル、つまり3番目です。二つの曲線の内側の薄い色がつけられている帯の中に、全体の94%が入ることになります。

 わが子の身長、体重、頭囲の数値を成長曲線に記してみましょう。気を付けるべき点は、「94%の帯に入っていないと普通ではない」と即断しないことです。帯が示している範囲は、乳幼児の多様な成長の中で比較的多いパターンに過ぎず、そこから外れても直ちに異常ということではありません。大切なことは帯に入っているかどうかではなく、月齢が増すにつれて数値が曲線に並行して増えるかどうかです。わが子の成長の評価は、ある月齢の一点で捉えるのではなく、数ヶ月にわたる伸び具合で見ることが肝要です。たとえ帯から外れていても、曲線に沿って数値が増えていれば、それがその子なりの成長パターンということになり、問題はありません。もしも数値が曲線に並行して増えておらず、横ばいや下向きになって成長が鈍化している場合は、栄養が不足していたり成長を阻む病気が潜んでいたりする可能性を考えなくてはなりません。かかりつけ医にご相談ください。

 成長曲線では、体重や身長にばかり目が向きがちですが、頭囲にも注目してください。頭囲の増加は、脳の発達と密接に関連しています。生後すぐは約33cm、生後4ヶ月で約40cm、1歳の誕生日で約46cmまで大きくなります。大きくなった脳には、大切な神経機能が次々に宿っていきます。「成長」は身体(身長、体重、頭囲)が大きくなること、「発達」は能力・機能(知能、運動、社会性など)が伸びることをそれぞれ意味しますが、頭囲は両者をつなぐ重要な指標と位置づけられます。

 母子手帳に掲載された成長曲線で、もう一つ気を付けたい点があります。多くの先進国は、体格指数(BMI)に基づき、体重が多めの子どもに対して「過体重」という分類を作り、精密検査を要する「肥満」とは区別しています。しかし日本は、肥満度という別の指標に基づき、「太りすぎ」「やや太りすぎ」「太りぎみ」という表現で、肥満を強調しています。保護者に余計なプレッシャーをかけて、過度の痩せ願望を誘発するおそれがあります。3歳前後から始まる肥満とは異なり、1歳未満児の過体重は、メタボリック症候群などの病的な肥満につながらないことが判っています。赤ちゃんの体つきは、ぽっちゃり型でも構いません。無用なダイエットは、赤ちゃんにとって百害あって一利なしです。決して行わないでください(ただし、ジュースや菓子類の甘味を常用してはいけません。止めましょう)。まれなケースですが、身長の伸びが悪いのに体重だけがどんどん増えるときに、隠れた病気が見つかることがあります。かかりつけ医にご相談ください。

 成長曲線を活用することで、わが子の成長と健康状態を確かめることができます。乳幼児健診などで得られた身体計測値は、そのまま(数字の羅列だけ)では宝の持ち腐れです。成長曲線にぜひご記入ください。そして伸び具合が気になったら、専門家(かかりつけ医や保健師)に相談してみましょう。次回の第二編では、学童・生徒(小中高校生、6〜18歳)における成長曲線の活用法について解説する予定です。