2016年7月26日

結核は過去の病気ではありません

 2016年4月から大和市でBCGの個別接種が始まりました。BCGは結核を予防するためのワクチンです。1921年にフランスで開発され、1943年に日本でも使用が開始されました。BCGは結核の撲滅に向けて大きな役割を果たしています。今回はBCGと結核の話をしましょう。

 結核は結核菌によって起こる病気です。成人では多くの場合、結核菌に感染しても免疫が働くため、菌の活動がいったん抑えられます。しかし菌自体は体内に潜伏し、数年から数十年後、免疫力の低下に乗じて増殖し始め、結核を発症させます。肺に感染することが多いため、持続する微熱や倦怠感のほか、咳や血痰などの呼吸器症状を伴います。一方で乳幼児が感染した場合、菌に対する免疫が未熟なため、菌は早々と活動を始めます。肺だけにとどまらず、菌が全身に散布されて肺以外の臓器にも波及し、粟粒結核や髄膜炎などの重い合併症を生じることがあります。感染してわずか数週から数ヶ月間で、病状は一気に進行します。結核性髄膜炎は医学の進歩した現在においても治療が難しく、死亡したり重い後遺症を残したりする例が少なくありません。

 1930年代から戦後しばらくの間、結核は死因の第一位を占めていました。以後は徐々に順位を下げていますが、新登録制度が始まった1962年の時点でなお、年間の罹患者は38万人、死亡者は2万8千人(うち14歳以下の小児は各々、5万3千人、460人)を数えました。今日でも、毎年新たに2万人以上の罹患者が発生しています。2015年は、全国で23880人、神奈川県内で1855人、大和保健所管内で48人の新規報告がありました。過半数は60代以上の高齢者ですが、それ以下の各年代にも万遍なくみられます。日本は世界的にみて結核の中蔓延国に位置づけられます。結核は過去の病気ではありません。ただし、14歳以下の罹患者は年間約50人、死亡者は2001年以降1人にとどまっています。小児だけに限れば、日本の結核罹患率は人口10万人対0.4〜0.5で、低蔓延国の米国(人口10万人対0.8)よりも低い数値です。

 小児の結核が減ってきた理由は三つあります。まず、周囲の成人で結核にかかる人が減ってきました。ついで、結核にかかった人が見つかったら保健所が接触者検診を行い、菌に感染した人に抗結核薬を予防投与して発症を阻止します。水際作戦が功を奏しています。さらに、BCGワクチン接種の役割が大きいです。生後1歳までの接種により、結核の発症を52~74%、重篤な髄膜炎や粟粒結核のリスクを64~78%減らせると報告されています。接種時期は生後5〜8ヶ月が最適です。当院では、3回目の四種混合ワクチンと合わせた同時接種を実施しています。個別接種化されていない地域では、四種混合ワクチンから1週間以上あけて集団接種にお出かけください。

 BCGを接種すると、2〜3週間後に接種部位の針痕が腫れてきます。膿が出ることもあります。数ヶ月で自然に治ります。もしも接種後1〜2日、遅くとも7日以内に、針痕が強く腫れたり膿が出てきたりしたら、接種前からすでに結核菌に感染していた可能性があります。コッホ現象といいます。コッホ現象には非特異反応も含まれますので慌てる必要はありませんが、2〜3日以内に接種した医療機関を必ず再受診してください。

 結核菌は、咳などの飛沫を介して人から人に感染します。小児の感染源の多くは近親者です。ある調査研究によると、3歳以下のいわゆる重症化しやすい年齢層で、両親が感染源と推定された症例が4割以上、親戚(おじ、おば)を含めると6割という成績でした。これは、子どもを持つ年齢層にある若年成人が感染源として最も重要であり、高齢者だけに着目していたら結核を見落とす危険があることを意味します。20〜40歳代の結核罹患率は高くありませんが、微熱、倦怠感、咳、喀痰が2〜3週間以上続く場合、念のために医療機関を受診することをお勧めいたします。

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