2012年6月29日

B型肝炎ワクチンは肝癌を予防する(改訂版)

 癌(がん)の発症防止に役立つワクチンは、子宮頸癌予防ワクチン(サーバリックス、ガーダシル)だけではありません。B型肝炎ワクチン(ビームゲン、ヘプタバックス-II)も肝癌を予防する意味から、癌予防ワクチンの一つに位置づけられます。

 B型肝炎ウイルス(HBV)は、肝硬変や肝癌などの重い肝臓病を起こすことがあります。しかし、HBVに感染した人すべてがそうなるわけではありません。免疫が活発に働く年齢(学童期以降)で感染すると、一時的な急性肝炎に終わるか、症状が現れないまま治るか、いずれにしてもHBVは体内から排除される場合がほとんどです。しかし免疫能がまだ十分に備わっていない乳幼児が感染すると、ウイルスはうまく排除されず、感染が生涯にわたって持続する場合があります。HBV感染後に持続(慢性化)する確率は、1歳未満で90%、1~4歳で25~50%、5歳以上で1%以下です。持続感染者の10~15%が将来、重い肝臓病に進展します。他人への感染源にもなります。できるだけ小さい年齢でのワクチンによる予防が重要です。また近年、成人期でも約10%の確率で持続感染に至る”遺伝子型A”が欧州から流入し、問題になっています。本来、外来種であった遺伝子型Aは、首都圏ではすでにHBVの半数以上を占めています。

 B型肝炎ワクチンは、日本ですでに20年以上前から使用されています。ただし現在のところ保険診療の対象は、HBVに持続感染している母親から生まれた赤ちゃんに限られます。赤ちゃんは母親の産道出血を介してHBVに曝される危険が高いため、出生後まもなくからワクチンを接種する方式が定められています。母子感染の予防効果は明らかで、小児期のHBV持続感染者の割合は、事業が始まった1986年からの10年間で、0.22%から0.02%へと十分の一以下に激減しました。しかし、母子感染の防止だけではHBVの根絶には至りません。

 HBVの感染経路の大部分は出生時の母子感染ですが、頻度は高くないとはいえ、父や祖父母など家族からの感染、あるいは保育所など集団生活での感染も存在します。HBVは血液・体液を介して感染するので、歯ブラシやひげ剃りの共用、傷口への血液・体液の付着には注意が必要です。汗や唾液を介する感染も報告されています。特に、アトピー性皮膚炎などで肌に傷が多いと、接触による感染の危険が増します。現在のところ、これらの感染経路に対する予防措置は、保険診療の対象になっていません。自費で受ける任意接種の扱いです。
 
 世界保健機構(WHO)は、天然痘、ポリオに続き、HBVの絶滅を目指しています。現在、世界179ヶ国が、すべての乳幼児にHBVワクチンを接種しています。日本は残念ながら、数少ない例外国の一つです。すべての乳幼児を対象に、無料化・定期接種化が実現されるべきです。

 当院はHBVワクチンの接種をお勧めしています。すべての年齢で接種できますが、年齢が小さいほど高い効果が期待できます。生後2ヶ月のワクチン・デビューが理想的です。標準的な接種方法は、1回目から4週あけて2回目、さらに20~24週あけて3回目です。計3回の接種が必要です。ヒブ・肺炎球菌など、他のワクチンとの同時接種も可能です。接種部位の腫れや一時的な発熱の報告はありますが、重篤な副反応はきわめて稀です。安全面では他のワクチンと変わりありません。ワクチンによる感染防止効果は20年以上続くと推定されています。追加接種の必要はないと考えられていますが、欧米の一部の国々では、思春期年齢における接種が性感染症対策の一つとして実施されています。

 (2011年5月1日、初版) (2012年3月7日、第二版) (2012年6月29日、第三版)

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