2010年4月26日

血液型の疑問にお答えします(改訂版)

[1] 血液型とは何でしょうか? 
 人間の体内を流れる血液は、1) 全身に酸素を運ぶ赤血球、2) 病原体などの異物から身を守る白血球、3) 出血を止める血小板、4) 液体成分の血漿、からできています。私たちにとってなじみの深いABO式血液型は、赤血球の表面に突き出た糖鎖の違いによりA、B、O、ABの4型に分類する方式です。赤血球の血液型はABO式の他にも、Rh式、MN式、ルイス式、P式、ダフィー式など数通りの分類法があります。さらに血液型は赤血球だけに限らず、白血球、血小板、血清にもあります。
 輸血の際にとりわけ重要な血液型が、赤血球のABO式とRh式です。型が合わないと、輸血した赤血球が壊されて溶血する危険があります。また、臓器移植に重要な役割を演じるのは白血球の血液型(HLA)です。型が合わないと拒絶反応を起こします。血液型は、他人の血液や臓器を自分が受け入れられるかどうかの判定材料として用いられます。

[2] 子どもの血液型をいつ検査すればいいでしょうか?
 基本的には、急いで知る必要はないと思います。手術や血液疾患の治療で輸血が必要になった時に検査すれば十分です。輸血を行う際、病院の検査室は血液型を数分以内に素早く判定します。たとえ親が血液型を申告しても、あるいは名札に血液型が記されていても、やはり検査を行います。もしも誤った記憶や記録に基づいて異型輸血を行うと、溶血反応を生じて生命を危うくするからです。したがって、健康時にわざわざ痛みに耐えて血液型を調べる意義はあまりなく、血液型を知らないことを気に病む必要もありません。子どもが成長して献血を行う時などに血液型が判ればよいと考えます。保育園・幼稚園の健康記録帳に血液型の記入欄が設けられている場合がありますが、「堂々と空欄のまま提出すればよろしい」とお答えしています。
 ただし検査の意義について、一つだけ例外があります。身内に「Rh陰性」の稀少血液型の方がいる場合、子どもの血液型(ABO式はともかくRh陽性か陰性か)を知っておくことは、危機管理の上で必要といえましょう。また、非常に低い確率ですが、Rh陽性の両親からRh陰性の子どもが生まれることもあり得ます。ちなみに、日本人におけるRh陰性者の割合は約200人に1人(0.5%)です。Rh陰性者の輸血に関して、各都道府県の赤十字血液センターに登録されている献血ネットワーク「Rh陰性 友の会」を用いて、迅速に対処できる体制が整えられています。
 当クリニックは、血液型の検査を希望される方に以上の説明を行い、その上で最終決断をお願いしています。なお血液型の検査は、輸血などを前提としない場合、健康保険が適用されません。自費診療になりますことをご了承ください。

[3] 血液型が変わることはありますか?
 血液型が異なるドナーから骨髄移植を受けた場合を除き、血液型が自然に変わることは絶対にありません。もしも変わったとしたら、どちらか一方の検査結果が間違っています。
 血液型の検査法にはオモテ検査とウラ検査があります。通常は両方を行って総合判定しますが、生後4ヶ月未満の乳児ではウラ検査ができないためにオモテ検査だけで判定しています。その結果、検査の信頼度がやや落ちます。生後間もない赤ちゃんの血液型を調べない産科施設もありますが、万一の誤判定を避ける意味では妥当な方針といえましょう。血液型を調べるなら、オモテ・ウラの両方が確実に検査できる1歳以降の方が間違いありません。同様の理由で、耳たぶからの採血(オモテ検査しかできない)よりも、静脈から採血した検体(オモテとウラが検査できる)の方が信頼度の高い結果を得られます。

[4] 血液型で性格を判断できますか?
 血液型性格判断には科学的な根拠がまったくありません。それにもかかわらず信憑性を持たれる原因は、「当たったことは強く印象に残るが、外れたことはすぐに忘れる」心理であったり、「言われてみるとそういう気がしてきた」「○型だからそれに見合う行動をとらなればならない」という自己暗示にすり変わっていたり。いずれも社会心理学的な錯覚に基づく行動(= 自己成就的予言)として説明されます。ABO式と体質の関連性を否定する論文が、世界トップレベルの科学誌に掲載されています(Nature、2000年)。
 血液型性格判断を会話の道具として楽しむのは結構ですし、いちいち目くじらを立てる必要はないでしょう。しかし血液型による差別にまで発展すると、もはや看過できない問題です。たとえば、多数派であるA型やO型の性格は好ましいとされる反面、少数派であるAB型は悪い性格特性と結び付けられることがよくあります。A型とB型の相性など、組み合わせの適否もしばしば論じられます。これが恋愛やビジネスに利用されると、一部の血液型の人々に不利益が生じます。結婚にまつわる悲喜劇、新規採用や人事異動に血液型を導入する会社など、差別と弊害の実例は少なからずあります。さらに望ましくない利用法は、保育現場での選別です。血液型別に色分けした帽子を園児にかぶせて「特性に合った教育をしている」ことを誇る幼稚園が実在します。個性に富む子どもたちを「こうあるべき」と勝手に決めつけて誘導することは、将来の可能性を著しく狭める結果になります。また、このような選別は、血液型を検査したことのない園児を仲間外れにし、保護者に無用のプレッシャーを与えることになります。まったく愚かな方針としか言いようがありません。行き過ぎた血液型性格判断は、世の中にとっても子どもにとっても害毒です。あまり真剣にとらえずに、お遊びの範囲を逸脱しないように留意したいものです。
 ちなみに、血液型性格判断が広く流布している地域は、日本、韓国、台湾など東アジアだけです。欧米ではまったく受け入れられていません。彼らに自己紹介する時に血液型を言うと、「何でそんなことまで教えるんだ。おまえは今から輸血用の血液を募るのか!?」と奇異な目で見られます。ときには警戒されることもありますのでご注意ください。

(2007年8月1日 初版掲載)

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