2006年12月1日

障害から才能へ

 私が当地で障害児支援に携わって約8年が経ちます。この間に多くの子どもたち、ご家族の方々と接する機会がありました。「われ以外みなわが師」の教訓どおり、各々のご家庭の子育て体験を伺いながら、私なりの支援のあり方を模索してまいりました。私がつねに心がけている基本姿勢は、① 疾患について正確な情報を提供すること、② 子育てに奮闘するご家族に共感し、親身になって援助すること、③ 療育について必要な措置を講じること(他の医療・福祉サービスへの紹介も含めて)の三点です。まだまだ至らない点も多いと思いますが、これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。


 障害児はその言葉どおり、家庭や集団で生活を送る上で何らかの障害を抱えているため、個々に合わせた支援を必要としています。しかし一方で、障害児の持つ能力の高さに驚く場面にしばしば遭遇します。むしろ健常児よりも優れている面も多々あり、日々の診療は新たな発見の連続です。障害児だから何もできないというのは全くの誤解であることを強調したいと思います。たとえば、ダウン症児に共通する、争いとは無縁の穏やかさ、他人と仲良く過ごせる協調性は、私にとって見習うべき良きお手本です。精神遅滞の子どもたちが見せる芸術的センス(絵画、書道、舞踊など)は、私たちに深い感動を与えてくれます。注意欠陥/多動性障害(AD/HD)児は、疲れを知らない底なしのエネルギーを秘めています。通常は興味が分散されて落ち着きませんが、一度「はまると」凄いパワーを発揮します。アスペルガー症候群の子どもたちは、抜群の記憶力を示します。百科事典やカレンダーを暗記するという話を聞くと、私など到底かなわないと思います。事実、これらの優れた能力を生かして社会的に成功している人々が大勢います。かのアインシュタイン博士はアスペルガー症候群でしたが、類いまれな気質と才能があってこそ、物理学を根底から書き替える大発見を成し遂げたのでしょう。

 障害児といえども達成感を味わいたい気持ちは健常児と変わりません。彼らに潜在する可能性(ポテンシャル)に目を向け、能力を伸ばすための環境と体制を整えることが私たちに求められています。それは未来の社会にとっても有用なことでしょう。しかし個々の場面では、可能性の限界に突き当たることも時に経験します。必ずしも理想通りに進まないこともあり得ます。それでもなお手を尽くすことにより、障害児とご家族に力強い安心感をもたらすように努めたいと思います。子どもたちの笑顔と成長を糧に、これまでにも増して障害児の支援に取り組み、成育外来の診療内容を充実させてまいります。また、子育てに奮闘するご家族に共感し親身になって援助するという信条は、障害児だけに限ることではありません。すべての子どもたちとご家族に向けて、子育ての良き相談相手になりたいと願っています。診療の合間にどうぞ何事でもお尋ねいただければ幸いです。

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